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エンジニアが本音で語る「スピンレス®開発秘話」

「スピンレスR」開発に不可欠だったパーツの高精度を徹底追求

先ほどお話しした、フィルム、磁性体のカセットテープやビデオテープなどは、ずっと連続して生産ができます。しかし、液晶業界では1枚1枚毎のガラス基板にパネルを作っていかなければいけないという宿命を持っております。限定されたガラス基板の上に高精度に1枚ずつ塗らないといけないということが、まず1つの大きな課題でした。

もう一つは塗る液体が特殊な化学薬品であることが理由としてあります。この特殊な化学薬品とは、非ニュートン流体と言われる特性を持っていまして、身近なものでいくとペンキのようなものをイメージしてください。例えばペンキの入っている缶の蓋を開けてハケを中に入れておく。ペンキの液はひっくり返すとすぐにはドロっと出てこないのですが、ハケを入れて壁にスーッと描くときには、あれほどすぐ出てこないような液がすぐに塗れるのです。それはなぜかというと、あのドロドロしたのものに力を加えることによって液の粘質が変わり、それで壁にさらさらと塗れるのです。液体を非常に薄い膜で高精度に塗らなければいけないにもかかわらず、このように非ニュートン特性と言う、力を与えれば粘質が変化してしまう非常にわがままな性格をもっている液体の塗布技術開発が課題としてありました。

我々も先ほどお話しした「コート&スピン®」という技術の時代から、液をほぼ基板全面に広げるという技術は蓄積していましたが、その技術の延長線上に、この「スピンレス®」が生まれたのです。つまり、先ほどの粘質が様々に変化する特性をもった薬品を、いかに均一にノズルから出すかという技術でたいへん苦労しました。

最初に、スリットノズル(ダイ)と呼ばれる高精度なノズルを作らなければなりませんでした。詳しい精度の数字はお話できませんが、金属加工メーカーに「このような高精度なノズルをつくりたい」という相談をした時のことです。 

計測器には基準器というものがありますが、私どものリクエストは「メートル原器」を製作する精度とほぼ同等でした。当然簡単には作れないそうで、まず、そこから苦労が始まり金属加工メーカーさんと一緒に高精度なノズルをつくる為のデザイン、材質、削り方というところまで遡って検討する事になり、金属加工メーカーさんを大いに苦労させてしまいました。